- 出版社/メーカー: ホビージャパン(HobbyJAPAN)
- 発売日: 2017/12/10
- メディア: おもちゃ&ホビー
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ついについに、ドミニオンの第2版の日本語版が間もなく発売となります。
1版は既に生産終了、プレミア価格がついているところだったので、これを機にドミニオンを始める人が増えてくれればいいなーと祈るばかりです。
第2版で追加されたカードはなかなか効果がダイナミックなものもあり楽しい。オススメです。
話は変わりますが、今年の春ごろ、「ボードゲームライトニングトーク(LT)」というイベントに登壇者として参加いたしました。
これは、登壇者が次々とボードゲームに関する何かしらの事をプレゼンする、ということで、割と人前でしゃべることが好きな自分としてはとてもいい機会だと思い参加してきました。
今回は、そこで発表をした「最速で中級者になれるドミニオンのインスト提案」というタイトル(当日と改訂しています)のプレゼンをこの場で載せようと思います。
あくまで僕の思うドミニオンってこうだ!という像をもとにしている一提案となりますので、もしかしたら特にドミニオン古参の方たちからすると「ちょっと違くね?」となるかもしれませんが、魂を込めた内容になっていますので、特にこれから始める方は是非参考にしていただきたいと思います。
~プレゼン開始~
よろしくお願いします。
突然ですが、ドミニオンって面白いですよね。この写真は、とある会で小学生プレイヤーたちとドミニオンで遊んでいたときのものです。
ドミニオンは現在拡張が10個以上出ており、カードの種類は200種類以上に昇ります。 根幹となるルールはシンプルなものの、これだけ種類が多いと知識や経験値の差が勝率に直結するため、新しく始めた人が強い人に勝つのはなかなか難しい、という現状があると思っています。
そこで今回は、ドミニオンをやったことが無い方にも提案したい、ルールを知るだけでなく「勝つための基本的な考え方を身につけることができる」インストの提案をしたいと思います。
「サプライ」と呼ばれている場に置くカードは、初めに遊ぶことを推奨されている「基本のゲーム」ですとこのようになります。財宝カードと勝利点、アクションカードが10種類並んでいます。 手前に置いてあるのは各自の山札と、初期の手札の例を表しています。
今回のインストでは、並べるカードを一気にここまで削ってしまいましょう。
本来使うカードたちをなぜ、ここまで大胆に取り除いてしまったかと言いますと、ドミニオンにおいて「お金を購入」することは超基本的で重要な行動となるため、いったん10種類もあるアクションカードからは目を離してもらい、お金の購入に焦点を絞るためとなっています。
ではこの場で行うドミニオンはどういうゲームになるのかと言いますと、プレイヤーの行う行動は「引いた手札にあるお金を使い一番高いものを買う」ことのみとなる、つまり手札によってすることが決まってきます。銀貨、金貨と買うことでお金の出力を高めていき、勝利点である「属州」を買うための8金を誰が一番早く、多く出せるか?という戦いになります。
さてこのゲーム、やることが決まっている作業ゲーにしかならないたため、ぶっちゃけつまんないです。 そこで次は、代表的なアクションカードを入れてゲーム性を付与してみたいと思います。
まず入れていただきたいカードがこちらの「鍛冶屋」になります。これは使用することにより、カードを山札から3枚引くことができます。こいつ自身はお金を生み出しませんが、手札を増やすことによりお金をたくさん出すためのサポート役として非常に優秀です。
鍛冶屋を追加すると、このようなサプライになりますね。
こうすると、お金だけのときと比べ戦略性がある程度出てきます。鍛冶屋をいつ買い、何枚買い、いつ使うか?の判断が、相手より先に属州を変えるか?に大きく影響することになります。
しかし、このままではソロゲー感が否めません。プレイヤー同士のインタラクションがかなり小さいため、自分のすべきことが相手の出方によってほとんど影響しません。
そこで次に、まず左側の「民兵」というカードを入れてみましょう。こちらは、2金を出しながら相手の手札を3枚まで削ることが出来るアタックカード、いわゆるお邪魔カードです。これにより、相手のお金を出す力を制御し出し抜くことができます。
そして、それの対抗策となる「堀」というカードも入れてみましょう。こちらは普通に使うと「カードを2枚引く」という鍛冶屋の弱体化でしかありませんが、相手が民兵を使ったときに手札にあれば、民兵の効果を無効にできます。
サプライはこんな感じになりますね。
さて、今までわたしが踏んできた手順をおさらいするとこのようになります。 まずは基本的な戦略として超重要な「お金を購入すること」を身に着けていただくためにお金のみの場から始め、ゲーム性を付与するため「鍛冶屋」「民兵」「堀」と順にアクションカードを入れてきました。 この手順で、他にも様々なアクションカード、勝利点カードをどんどん追加していった結果が…
この「基本のゲーム」のサプライとなるのです。
流れをまとめると、まず戦略上重要な「お金の重要さ」を知ってもらった上で、順を追って要素を追加していくことで戦略が広がっていく、というのを身に着けていただくために、このような回りくどい説明をしてきました。
いきなり「基本のゲーム」から始めなかった意図はご理解いただけたでしょうか。「お金の重要さ」を知っていただくだけでなく、わたしが理解している「ドミニオンの仕組み」も理解していただければ幸いです。
ちなみに、お金と鍛冶屋のみを使う戦略は「ステロ」と呼ばれており、これは上級者にも通用するとても強い戦略として知られています。
さて、これはドミニオンに限らずいろんなゲームに言えることですが、初プレイのゲームのインストをする際、今回ご紹介したような「基本的なところから要素を順に追加していく」という方法はルールを把握してもらう上でとても有効だと考えています。
なぜならば、人というのは話を聞いただけで一度にたくさんのことを理解するのはなかなか難しく、実際に手を動かしながら少しずつ、ルールの枝葉となる部分を知ってもらうのがスムーズだと考えているからです。
そのような視点において素晴らしいゲームがあります。 この「アンドールの伝説」というゲームですが、なんと遊ぶ前にルールブックを熟読する必要がありません。開封し、準備をするところからいきなりルールブックを読み進めながら遊ぶことができます。遊んでいるうちにルールも同時に知ることができる、まるでテレビゲームのチュートリアルのような体験をすることができます。 インストとして理想形がここにある、他のすべてのゲームがこの方式を導入すればいいのに。とわたしは強く思っています。
アンドールの伝説 (Die Legenden von Andor) 完全日本語版 ボードゲーム
- 出版社/メーカー: アークライト
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※余談ですが、このページの販売元を別の会社に記載してしまい、アークライトの方の前でさらしてしまうというとんでもない大失態を犯してしまいました。(笑)上の画像は修正済みです。
また、今回のインストでは初めから戦略を加味、というバイアスをかけています。これには否定的な方もいるかもしれません。インストでは「ルールだけ教えてもらいたい」として、そこから先を考えるのが楽しい、と。
しかし、わたしはある程度、インストの際に有効な戦略や定石をある程度紹介し導いてあげる、のはありだと思っています。 将棋では初手の指し方を知ろう、麻雀ではまず平和を目指すところから始めよう、というのとニュアンスが似ていますね。
少なくともドミニオンには、最初の説明によって戦略について考える楽しみが削がれるほど、底の浅いゲームではありません。実際、お金を買わずに勝つのが最適だったり、属州を買わない方が良かったりするサプライも存在しますので、お金は重要ですが、豊富な拡張のおかげもあって実はほんの一部の戦略でしかない、とも言えるのです。
で、これがオチになるのですが、自ら戦略についてルールブックで言及するデザイナーもいます。
今回の話がドミニオンだけでなく、他のゲームで遊ぶ際のヒントになれば幸いです。 ご清聴ありがとうございました。